裁判員、冤罪、死刑急増でどうする? 伊藤和子・寺中誠『裁判員と死刑制度』(新泉社)

伊藤和子・寺中誠『裁判員と死刑制度――日本の刑事司法を考える』(新泉社、2010年)

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 オビより
つぎつぎと下される死刑判決、明らかになる冤罪事件、
その中での裁判員制度の施行……。
いま、この国の刑事司法は、どこへ向かおうとしているのか。
冤罪事件に精力的に取り組む弁護士、伊藤和子氏と
アムネスティ・インターナショナル日本事務局長、寺中誠氏が
日本の刑事司法の問題点を洗い出す。

伊藤和子
自白重視の判断や有罪推定の判断に対して、市民の立場から異議をとなえて、本当に「疑わしきは被告人の利益に」の原則に基づいた判断をしていただきたい。そうしたことを通じて、刑事司法を今までにないかたちで変えていくことができるのではないかと思うのです。

寺中誠
近代の原則としての人権の考え方は、「人の命を奪うな」ということです。ですから、応報で人の命を奪ってはいけないのです。それが感情的なレベルでの復讐に流れていってしまうと、近代のさまざまな法体系や社会が根本から崩れさっていく。


 本書は、大学で行なわれた二人の講演をそれぞれまとめ、さらに二人の対談を収録したものです。分かりやすい講演に加え、学生らとの質疑応答も入っており、また最新動向をふまえた二人の対談で補足。ひじょうに読みやすく、コンパクトにまとまった一冊です。

 寺中さんの指摘するとおり、無根拠に凶悪犯罪の増加が言われ(統計的に嘘)、応報的に死刑が煽られている日本社会は、近代以前に退化していっているとしか言いようがありません。警察庁や法務省と、同調したマスコミとが世論を煽り、煽られた世論データ(厳罰化、死刑制度を支持)に基づいて、実際に裁判制度・裁判結果に影響をもたらす。これは、究極的には法の否定に行き着くでしょう。

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