臼杵陽監修、赤尾光春・早尾貴紀編『シオニズムの解剖ーー現代ユダヤ世界におけるディアスポラとイスラエルの相克』(人文書院、2011年)
私も企画から関わり、編集・執筆した『シオニズムの解剖ーー現代ユダヤ世界におけるディアスポラとイスラエルの相克』(人文書院)が刊行されました。シオニズムに関する日本語圏での初めての総合的な論…
有馬哲夫『原発・正力・CIAーー機密文書で読む昭和裏面史』新潮新書
どうやって日本に原発が導入されたのか? アメリカの「核の平和利用」キャンペーンを、核アレルギーの強かった日本に受け入れさせるための陰謀とは? そこで読売新聞社の果たした役割とは?
こんな大事故に行き着いてしまった、その間違いの発端をじっくりと考え…
広瀬隆『福島原発メルトダウン』朝日新書、2011年
タイトルとは違って、福島のことに限定せず、日本全体の原発が置かれた危機的状況をコンパクトに解説。もちろん、福島第一原発のことも書いてはあるが、そもそもの原発の構造、被曝の仕組みから、地震や断層と耐震構造のことなど、読みやすくきれいにまとめてあります。
福島第一原…
鈴木真奈美『核大国化する日本ーー平和利用と核武装論』平凡社新書、2006年
3.11以前、5年前に出された本だが、「核」をめぐる全体の構図を把握するために簡便な本。
なぜ、「非核三原則」の国が、世界でも屈指の核大国として、プルトニウムを保持しているのか。
世界大の目で見たときに、核大国・日本はどのように評価されて…
肥田舜太郎/鎌仲ひとみ、『内部被曝の脅威――原爆から劣化ウラン弾まで』、ちくま新書、2005年
福島だけでなく、宮城から茨城まで、と思ったら、神奈川・静岡でも検出された放射能汚染。
これらは、福島原発からまき散らされた放射性物質=死の灰、が降り積もったもの。つまり、政府が安全だ安全だと叫び、影響は無視しうるとしている…
矢ヶ崎克馬、『隠された被曝』、新日本出版社、2010年
福島原発事故のもたらした被曝危機について、内部被曝の専門家である矢ヶ崎克馬氏が、5月17日に福島県郡山市に来られて、講演をされます。というか、私が発案して依頼しました。
文科省は、子どもにまで原発作業員並みの被曝(年換算20ミリシーベルト)で我慢しろと強要し…
『現代思想』2011年5月号「東日本大震災ーー危機を生きる思想」
〈3.11〉の大地震、僕は仙台で被災し、仙台はすべてのインフラと交通機関を失った孤立都市になりました。
そして原発の爆発で、すぐに仙台を離れて関西に避難しました。7歳の小さな子どもへの影響を考えてのことです。
その後、多くの人たちの脱出をサポートし…
昨年、このブログをいったん休止し、ちょっと異なるスタイルで、「早尾貴紀:本のために」として新しく出直すということにしました。
しかし、ある程度やったところで、忙しくなり、あまり更新しなくなっていたところに、〈3.11〉の東日本大震災。
原発爆発を受けて、緊急に仙台を脱出。その後、たいへんいろいろな展開があったために、そっち…
森岡正博、『生命学に何ができるか――脳死・フェミニズム・優生思想』、勁草書房、2001年
立岩真也、『弱くある自由へ――自己決定・介護・生死の技術』、青土社、2000年
とうとう本人の同意なしの脳死・臓器移植が始まりました。とんでもない恐ろしい社会の到来です。
まだ若い自分の子どもが突然の交通事故で瀕死の重体になっ…
高榮蘭『「戦後」というイデオロギーーー歴史/記憶/文化』(藤原書店、2010年)
8月に入り、原爆投下の日を過ぎ、終戦/敗戦の日が近づきつつあります。65年が過ぎ、もう「戦後」という言葉さえも薄れているのか。そしてそれとともに、日本人の思考も短絡が進んでいるように思います。
そんなときこそ本書を手に、暑い夏をじっくり…
駒井洋[監修]『ラテンアメリカン・ディアスポラ』、明石書店、2010年
前回紹介のグローバル・ディアスポラ叢書の第6巻は、ラテンアメリカ。
【内容】
ヨーロッパの植民地であり移民受け入れ地域であったラテンアメリカは、20世紀以降急速に移民送り出し地域に転じた。プエルトリコ、キューバ、メキシコ、ペルー、アルゼンチン…
駒井洋[監修]、宮治美江子[編]、『中東・北アフリカのディアスポラ』、明石書店、2010年
明石書店より、グローバル・ディアスポラ叢書(全6巻)、創刊。同出版社からは、それに先駆けて、私たちも、臼杵陽(監修)/赤尾光春・早尾貴紀(編)『ディアスポラから世界を読む――離散を架橋するために』(2009年)を刊行。ディアスポラ…
丸川哲史『魯迅と毛沢東ーー中国革命とモダニティ』以文社、2010年
今年度、すさまじい勢いで仕事を世に問うている丸川氏。先に『台湾ナショナリズム』(選書メチエ)を出したばかりですが、すでに今年は、『ポスト〈改革開放〉の中国』(作品社)、『竹内好』(河出ブックス)を出し、他にも編訳書も。驚異的です。
それにしても、…
上山安敏『ブーバーとショーレム――ユダヤの思想とその運命』岩波書店、2009年
先日初めて、あるシンポジウムで著者にお目にかかりました。ご高齢にもかかわらず、というか、年齢を感じさせない、旺盛な学究心と執筆力に感服しました。
本書は、私の『ユダヤとイスラエルのあいだ』(青土社)の問題意識と強く重なるものです。が、本書…
ヂンダレ研究会編、『「在日」と50年代文化運動ーー幻の雑誌『ヂンダレ』『カリオン』を読む』(人文書院、2010年)
不二出版から復刻刊行された『ヂンダレ・カリオン』(全3巻/別冊1)をもとにしたシンポジウムの記録に、さらに論考と資料を加えて一冊に。
シンポは、復刻に当たった細見和之氏の司会のもとに、若い世代の研究者や…
酒井啓子『〈中東〉の考え方』、講談社現代新書、2010年
イラク専門家として著名な酒井啓子さん。最近、個人的には、ミーダーン編『〈鏡〉としてのパレスチナ』(現代企画室)でごいっしょさせていただきました。そのときも、イラクのユダヤ教徒やクルドなど、幅広い文脈からお話をいただきましたが、今回の新書もすばらしい。
イラクが…
ジャン・ジュネ『シャティーラの四時間』(鵜飼哲/梅木達郎=訳)、インスプリプト、2010年
昔の『インパクション』51号でしか読めなかった、ジュネ、伝説のルポルタージュ。インタヴューや関連資料やジュネ論を併せて、ついに一冊に。
1982年、イスラエルはレバノン侵攻。当時レバノンを拠点にイスラエルへの抵抗運動をして…
丸川哲史『台湾における脱植民地化と祖国化――二・二八事件前後の文学運動から』明石書店、2007年
陳千武『台湾人元日本兵の手記 小説集『生きて帰る』』丸川哲史訳、明石書店、2008年
前回、丸川さんの新刊『台湾ナショナリズム』を紹介しました。その根底には、ここ数年で丸川さんが関わって出されている、台湾研究叢書(いまのと…
丸川哲史、『台湾ナショナリズムーー東アジア近代のアポリア』、講談社選書メチエ、2010年
今日発売(6月26日号)の図書新聞に、丸川さんの『台湾ナショナリズム』の書評を書きました。
ほんの冒頭のさわりだけ、載せておきます。ぜひ同誌でお読みいただくとともに、本書も読んでほしいと思います。
台湾を考えるとは、そも…
ナージー・アル・アリー『パレスチナに生まれて』、ジョー・サッコ序文、露木美奈子訳、藤田進監修、いそっぷ社、2010年
パレスチナに行くとあちこちに見られる、この男の子の後ろ姿「ハンダラ君」。壁に描かれたり、キーホルダーやペンダントに象られたり。
ハンダラ君は、風刺画家ナージー・アル・アリーが描いたパレスチナ難民のキャ…