日本語で哲学するとは?――熊野純彦、『日本哲学小史――近代100年の20篇』(中公新書)

熊野純彦、『日本哲学小史――近代100年の20篇』(中公新書、2009年)

画像


 熊野さんと言えば、『西洋哲学史』(岩波新書)、『現代哲学の名著』(中公新書)『和辻哲郎』(岩波新書)と、怒濤のごとく新書を編み続けていますが、今度はこれ。

 今度すごいのは、福沢諭吉から始まり、西田や三木、和辻や九鬼を経て、戦後の市川浩や坂部恵にいたるまで、第一部「近代日本哲学の展望」として、150頁を書き下ろしていること。もう少し書き足せば、これだけで一冊の新書になる。というか、文字数が少なく頁数も少ない他の新書なら200頁分で、一冊になるでしょう。ここだけでも読み応えがあります。
 「哲学」という言葉はもちろん、とか「理性/悟性」、「帰納/演繹」といった言葉、翻訳概念をつくり出すことから始まった、近代日本の哲学を、「日本語で哲学すること」から根本的に問い直すこと。
 実際、古代ギリシャ語、古代ヘブライ語から、アラビア語を経て、ラテン語への「翻訳」、そしてラテン語から、近代国語としてのドイツ語やフランス語への「翻訳」によって、「西洋哲学」は発展してきたわけで、それを考えると、何をもって「西洋」と言うのか、それはどう東洋哲学とか、さらには中国哲学・日本哲学といったものと差異化されうるのか。
 ともあれ、翻訳と哲学とは切っても切れない関係にあり、「特異な日本思想」というものも、根源には他なる思想からの翻訳があるわけです。そしてそれを一人で概観するという力業には、本当に驚かされます。西洋哲学史を一人で書き切った熊野さんにして可能な日本哲学史だと思います。

 第二部では、若手執筆者らが、一哲学者につき一本の論文を選び出して、紹介していきます。
 五つの問題群を、「ことばへの視線」「身体性と共同性」「具体性の思考へ」「社会性の構造へ」「哲学史への視点」に分けて、各問題につき四人四本。
 年表と索引も付いて、総350頁。一冊で日本哲学史を概観し、かつ具体的な論考に沿った解説もじっくり読めて、お買い得。

にほんブログ村 本ブログ 学術・専門書へ


日本哲学小史 - 近代100年の20篇 (中公新書)
中央公論新社
熊野 純彦 編

ユーザレビュー:
野心的な日本哲学史の ...
日本語で(西洋)哲学 ...
第1部だけ読めば良い ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ商品ポータルで情報を見る