異形の哲学――アルフォンソ・リンギス『汝の敵を愛せ』『何も共有していない者たちの共同体』(洛北出版)

◆アルフォンソ・リンギス『汝の敵を愛せ』、中村裕子訳、洛北出版、2004年
◆アルフォンソ・リンギス『何も共有していない者たちの共同体』、野谷啓二訳、洛北出版、2006年


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 引き続き、洛北出版の本を紹介。出版社立ち上げの最初の一冊がこれでした。
 リンギスはその後、洛北でもう一冊訳され、また河出書房と青土社からもそれぞれ一冊ずつ刊行されたことで、一気に四冊が日本語になりましたが、その先鞭をつけたのが洛北出版です。

 リンギスは、リトアニア出身のアメリカ移民の家庭に生まれ、アメリカでは、レヴィナスやメルロ=ポンティ、クロソウスキーの英訳者としても知られているそうです。そこからもわかるように、強い現象学哲学の影響を受けた思想家ですが、超越論的な意識や志向性というよりは、身体性や皮膚・顔のもつ内部と外部の両義性を重視しています。
 そうであるがゆえに、「生きられた身体」を自ら移動させ、身体に、異邦の地の日常生活とそこの動植物を知覚させ、そこから思想を深めていきます。本書で著者は、イースター島や、ジャワ、京都、リオデジャネイロなどへ旅をします。本書は、写真も少なくなく、紀行文のようでもあり、哲学エッセイのようでもあります。美しくも、不思議な本です。

 リンギスの初の日本語訳ということもあり、大きな反響を呼んだ一冊です。
 解説は田崎英明氏。

 本書の詳細は、洛北出版の紹介ページへ。

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 リンギス、洛北の二冊目は本書。
 前著に比べると、紀行的要素が減り、より思想書的な印象が強くなっています。
 それにしても、この逆説的なタイトル。「何も共有していない者たちの共同体」とは何か。オビの言葉を引くと、
どこから来たかではない
なにができるかでもない

私たちと何も共有するもののない――人種的つながりも、言語も、宗教も、経済的な利害関係もない――人びとの死が、私たちと関係しているのではないか?
 本書の最終章、「死の共同体」はとりわけ印象的です。親族性の彼方に、「何も共有していない者たちの、あるいは何も作りださない者たちの、死すべき運命において見放されている人びとの友愛」が見いだされます。
他者のほうへ差し伸ばされた手は、他者の傷つきやすさ、疲れ、苦しみに触れ、他者が死に行く場所へと人を向かわせる。触れようと伸ばされた手は、見知らぬ命令に従う。この死が、私と関係するのだ。人には、他者の死を正当化する自由などありはしない。

 解説は、前著に続いて田崎英明氏が、さらにカントやニーチェ、ハイデガー、フーコー、ナンシーなどなどに論及しながら、思想史的意義を説明されています。
 そして本書ではさらに、堀田義太郎氏が、「アルフォンソ・リンギスと〈共同性〉の問い」という、ほとんど独立した論考のような重厚な解説を寄せられています。もちろん、ご本人も書かれているように、このような詳細な「説明」が、リンギスの奔放な文体に意図されたものを裏切っている可能性もあるのですが、解説がぶっ飛ぶわけにはいきませんので、これはこれで素晴らしい解説だと思います。

 詳細は、洛北出版の紹介ページへ。
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汝の敵を愛せ:Dangerous Emotions
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