「ディアスポラ」がユダヤ人・パレスチナ人の体験と東アジアとを架橋する――徐京植『ディアスポラ紀行』

徐京植、『ディアスポラ紀行――追放された者のまなざし』、岩波新書、2005年

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 最近ある場で、『ディアスポラから世界を読む』(共編、明石書店)について、主に自分の書いた「ディアスポラと本来性」を中心に話をしたところ、一部の参加者から、「ヨーロパのユダヤ人差別とか、パレスチナ/イスラエル問題とか、でもやっぱり遠い世界のこととしか思えない」とか、「ヨーロッパや中東の人種差別とか民族差別とかは、やっぱり日韓とか東アジアとは別もので、類似も共感も覚えない」、といった意見をもらった。
 僕の説明が不十分だったせいもあろうとは思う。しかし、その話はアカデミックな場でのことではないので、これが一般的な感覚としては仕方のないところかもしれない。そもそもが、「ディアスポラって聞いたことがないけど、何?」っていうのが、世間ではむしろ当たり前なのだから。

 そこで、ぜひとも薦めたい一冊が、徐京植さんの『ディアスポラ紀行』。薦めたい理由はいろいろ。
 まずは新書サイズで、コンパクト、低価格。
 「ディアスポラ」という用語を用いる必然的な世界史上の文脈を広範囲におさえていること。
 とりわけ、ユダヤ人差別とパレスチナ問題への深い共鳴と、それを日本の朝鮮の植民地支配、韓国の民主化運動、在日朝鮮人問題に架橋していること。
 また、ディアスポラの民による文学や芸術作品に表象される近代化の暴力を、鋭く読み解くことによって、そしてまたアートのもつ越境性に着目することによって、ディアスポラの問題の普遍的次元を提示していること。

 率直に言って、岩波新書のなかの最重要書のひとつだと思っています。
【目次】
プロローグ――わだちのフナ
I 死を想う日――ロンドン2001年12月
II 暴力の記憶――光州1990年3月・2000年5月
III 巨大な歪み――カッセル2002年8月
IV 追放された者たち
 1 難民の自画像
 2 昨日の世界
 3 三人のユダヤ人
エピローグ――コリアン・ディアスポラ・アート


 なお、10月12日に『ディアスポラから世界を読む』刊行記念イベントとして、都内の書店で、監修者の臼杵陽さんと、徐京植さんとによる対談トークを企画しています。
 詳細は後日お知らせします。
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ディアスポラ紀行―追放された者のまなざし (岩波新書 新赤版 (961))
岩波書店
徐 京植

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