世代をまたぎ、本土とのあいだをまたぐ沖縄戦の記憶――目取真俊『風音』

目取真俊、『風音――The Crying Wind』、リトルモア、2004年

画像


 『虹の鳥』に続いてもう一冊、目取真俊の小説を紹介。
 「風音」とは、風葬場に置かれた戦死した日本兵の頭蓋骨のなかを通り抜けるときに響く風の音だ。兵士は、本土から沖縄戦のときに来て墜落した特攻隊員。
 物語は、この頭蓋骨と風葬場を軸に、沖縄と本土の老人たち(直接体験世代)、その子ども・孫たちの、出会い・人間関係の変化によって展開する。拒絶と邂逅、そして離別。
 『虹の鳥』に比べれば、全体のトーンははるかに静かで、とくに子どもどうしの、あるいは子どもと老人との交流には温かい雰囲気も感じられる。
 だが、目取真氏の描く沖縄に「暴力」が語られないはずはない。というか、現実に暴力は蔓延しているし、取り憑いているのだ。
 とりわけ、ドメスティック・バイオレンスから逃げて「帰郷」した母子を、本土から執拗に追いかけてくる再婚の夫の、度を超えた暴力。そしてそれから逃れることも、いなすこともできない。最終的には、「対抗暴力」とでもいう形で拒絶するしかなかったが、それはもちろん問題解決にはならなかった。
 そして、その暴力の問題に対処しようとするときに、老人たちにいやおうなく去来する戦争の記憶。あるいはまた、本土から来た余命いくばくもない老婦人もまた、沖縄戦に散った大切な人の亡骸を求めてこの島に彷徨い、戦争の記憶を喚起する。

 沖縄と本土、戦争と現在。重層化した暴力と記憶を媒介に、物語は立体的に描かれている。

にほんブログ村 本ブログへ


風音―The Crying Wind
リトルモア
目取真 俊

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ