植民地主義の二重性:包摂と排除の典型としてーー水野直樹『創氏改名』

水野直樹『創氏改名ーー日本の朝鮮支配の中で』岩波新書、2008年

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 以前に取り上げた、梶山季之「族譜」(『族譜・李朝残影』岩波現代文庫)の背景となる「創氏改名」をあますところなく解説。新書ということもあり(実際には新書の水準を超えた内容となっていますが)、この問題を知るうえでの基本文献だと思います。
 強制的だったのか自発的だったのかという矮小化された争点がありますが、根本的に創氏改名とは何であったのか、ひいては、植民地支配とは、植民地とは何なのかを、ひじょうによく指摘していると思います。朝鮮半島においては、実質的な「創氏」の強制があったのはもちろんのことですが、しかし、日本本土(内地)にある旧来の氏(姓)が奨励されたわけではありませんでした。むしろ、そのことによって、朝鮮半島出身者と日本列島出身者との区別がなくなってしまうことが、周到に回避されていたことは、最大限強調されるべきでしょう。典型的な朝鮮の姓が否定・抹消されると同時に、しかし、伝統的な日本の氏を名乗ることは禁止されたのです。「それでは真に日本人になってしまい、区別がなくなってしまう」と。
 これこそが、植民地支配の本質だと言うべきでしょう。一般に「同化政策」とも言われましたが、しかし、完全な同化はむしろ恐れられていたのです。朝鮮人の独自のアイデンティティとナショナリズムを否定しつつ、しかし、「日本人」にもさせない。朝鮮人をこの両義性のあいだに押し込めてしまうことこそが、植民地主義でした。

 このことは、現在の朝鮮半島にも爪痕をのこしているでしょうし、また、世界中の植民地や占領地にも通じる問題だと思います。たんに過去の歴史ではありません。

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