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zoom RSS 丸川哲史氏の台湾関係の重要書二冊(明石書店、台湾研究叢書)

<<   作成日時 : 2010/06/24 19:16   >>

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丸川哲史『台湾における脱植民地化と祖国化――二・二八事件前後の文学運動から』明石書店、2007年
陳千武『台湾人元日本兵の手記 小説集『生きて帰る』』丸川哲史訳、明石書店、2008年


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 前回、丸川さんの新刊『台湾ナショナリズム』を紹介しました。その根底には、ここ数年で丸川さんが関わって出されている、台湾研究叢書(いまのところ全7巻か)の存在があります。そのなかでも、この二冊。
 『台湾における脱植民地化と祖国化』は、1947年の二二・八事件をはさむ45-49年に焦点を当てたもの。この期間というのは、45年に終わる日本の植民地支配から、49年に国民党統治が始まるまでのあいだの、大いなる変動の時期。一方で、半世紀にもわたった植民地制度の直後であり、まさにポストコロニアリズムの問題が問われだす。他方で、国共内戦で共産党が大陸で勝利し、国民党が台湾に撤退、大陸では中華人民共和国が成立。すなわち、冷戦体制の始まりでもある。そういう時期です。
 この二重の問いが凝縮しているのがこの45-49年期なのであり、本書はそこを焦点化することで、「東アジアの近代」全体のなかで、台湾の重層的なポジションを浮かび上がらせています。

 もう一冊。

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 植民地期において日本軍の兵士となった台湾人は、国民党統治の戦後台湾では、戦時期つまり抗日戦争期の「裏切り者」とされてしまいます。「日本兵」として、「台湾人」として、「中国人」として、分裂しつつ重なるアイデンティティ。
 また、作者の陳氏は、植民地教育による日本語話者であり、日本語で書くことも可能な作家とのこと。もちろん母語は台湾語。そして本書は北京語(中国語)で書かれており、かつそれが、丸川氏によって日本語に翻訳されたものです。日本語と、台湾語と、中国語とのあいだ。
 この引き裂かれのなかに、台湾人の苦悩が凝縮されています。
 また、その新しい支配者の「国語」たる北京後から、旧宗主国の言語である日本語へ移すという仕事をされた丸川さんのお仕事に感銘を受けました。

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