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zoom RSS エルサレムで聖書についての対談を読む――これは池澤夏樹ではなく秋吉輝雄の本だろう

<<   作成日時 : 2010/01/15 07:54   >>

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池澤夏樹『ぼくたちが聖書について知りたかったこと』小学館、2009年

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 パレスチナ/イスラエルでの移動中、中途半端に空いた時間などに、この本を読んだ。
 これは、オビに名前の出ている、碩学・秋吉輝雄の本である、というべきである。
 著者として名前を出さないのは、本人が固辞したからだろうか。
 それにしても、これが池澤夏樹の本として売り出されているのは、商業主義も度が過ぎる。

 聖書学の隠れたる大家で、啓蒙書を書かない秋吉氏に長時間インタヴューをした、というだけで、本書には価値がある。とくに第一部「聖書とは何か?」、第二部「ユダヤ人とは何者か?」は、本当の意味で根本的なところから、「聖書」とか「ユダヤ人」とくくられる存在の生成について、わかりやすく説いている。

 ただし、第三部「聖書と現代社会」について、とくにイスラエルをめぐる政治絡みの部分については??
 聖書学者は聖書についてしかやはり語れないのだろうか。「イスラエルの憲法には信教の自由が明記されている」といった発言とかはいただけない。イスラエルには憲法はないし、憲法の代わりとなる重要法令群(基本法群)の一つである独立宣言文書にも、「信教の自由」と書いているわけでなく、「ユダヤ人の国家だけれども、それ以外の宗教の信者の存在を否定するわけではない」ぐらいのニュアンス。つまり、ムスリムとクリスチャンの現実的な存在を認めざるをえなかっただけのこと。このあたりの近現代政治史のことになると、発言はかなりいい加減。
 中途半端に専門外の第三部も加えるのではなく、まだこの第三部には第一部・第二部と深く関わる内容も含まれるので、いっそのこと二部構成でまとめてしまったほうがよかったのではないか。

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ぼくたちが聖書について知りたかったこと
小学館
池澤 夏樹

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