テーマ:小説

ベツレヘムで『ベツレヘムの密告者』を読む/「コラボレーター」を描くことの難しさ

マット・ベイノン・リース『ベツレヘムの密告者』小林淳子訳、ラムダムハウス講談社文庫、2009年  数日ベツレヘムに滞在する機会があり、もってきていた日本語の文庫を、夜中に読む。半ば偶然、半ば選んだように、『ベツレヘムの密告者』。  エルサレム駐在の記者が、実際にあった事件への取材をもとに、しかしジャーナリズムでは描けない…
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沖縄の小説で今年もっとも重要な一作、目取真俊『眼の奥の森』(影書房)

目取真俊『眼の奥の森』(影書房、2009年)  前回、もののついでに話題作、池澤夏樹『カデナ』に触れたけれども、こんな駄作を、書評で絶賛したり、「今年の三冊」に取り上げたりする人が多いのに驚く。何が悪いとか間違っているのではないにせよ、設定、人物、主張がステレオタイプで、小説として何がきちんと評価してるのかと疑う。大作家に…
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ディアスポラ小説、黄ソギョン『パリデギーー脱北少女の物語』(青柳優子訳、岩波書店)

黄ソギョン『パリデギーー脱北少女の物語』(青柳優子訳、岩波書店、2009年)  前回紹介した金起林を訳した青柳優子氏による翻訳である本書は、やはり植民地問題に深く根ざす現代作家・黄ソギョン氏の小説である。  著者自身、満州の新京生まれで、日本の敗戦後に母方の故郷の平壌に移住。さらに南北分断の直前47年にソウルに移住。作家…
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イスラエルが建国失敗しユダヤ人が再ディアスポラした世界で――小説『ユダヤ警官同盟』(新潮文庫)

マイケル・シェイボン『ユダヤ警官同盟(上・下)』、黒原敏行訳、新潮文庫、2009年  新潮文庫の海外翻訳ものハードボイルド小説の新刊。  設定がものすごい。1948年に建国されたイスラエルは中東戦争に敗北し滅亡。ユダヤ人の離散がさらに開始された。そのなかで、アメリカ・アラスカ州沿岸のバラノフ島にユダヤ人入植地が建設され、…
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100年前に地元からこんな集団密航移民がいたんだ――新田次郎『密航船水安丸』

新田次郎『密航船水安丸』、講談社文庫、1982年(初版1979年)  1906年、カナダも含めた北米の移民規制が厳しくなってきた時期に、あえて集団密航という手段に打って出た人たちが、宮城県にいたんですね。新田次郎がそれを題材に小説にしたのが、『密航船水安丸』。  宮城県北部米川村の及川甚三郎が、移民した先のカナダ・バンク…
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孤児で棄民で入植者で戦争体験者、そしてチェチェン人と「兄弟」となったロシア人少年の物語

アナトーリイ・プリスターフキン、  『コーカサスの金色の雲』、   三浦みどり訳、群像社、1995年  ここ何度かチェチェンものの本を紹介してきましたが、今度は小説です。別の意味で圧倒されます。そして、チェチェン問題の錯綜具合を思い知らされます。  時代背景は1944年、第二次世界大戦末期。主人公は、ロシアの孤児…
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幼児買春・人身売買・臓器売買をテーマとした作品――梁石日『闇の子供たち』/そして映画パンフについて

梁石日『闇の子供たち』(解放出版社、2002年/幻冬舎文庫、2004年)  同書を原作とする映画も観た。よくあることだが、小説と映画とではだいぶ設定が変えてあった。大きくは同じ方向を向いているとは思うが、やはり別物。どちらが良いとか悪いとかではなくて。  東南アジア地域で横行する、幼児買春・人身売買・臓器売買をテーマとし…
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世代をまたぎ、本土とのあいだをまたぐ沖縄戦の記憶――目取真俊『風音』

目取真俊、『風音――The Crying Wind』、リトルモア、2004年  『虹の鳥』に続いてもう一冊、目取真俊の小説を紹介。  「風音」とは、風葬場に置かれた戦死した日本兵の頭蓋骨のなかを通り抜けるときに響く風の音だ。兵士は、本土から沖縄戦のときに来て墜落した特攻隊員。  物語は、この頭蓋骨と風葬場を軸に、沖縄と…
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沖縄に押しつけられ隅々にまで浸透した日常的な暴力の所在を描く目取真俊『虹の鳥』

目取真俊『虹の鳥』(影書房、2006年)  先に紹介した、黒澤亜里子・編『沖国大がアメリカに占領された日――8・13米軍ヘリ墜落事件から見えてきた沖縄/日本の縮図』(青土社、2005年)のなかには、編者・黒澤氏による「目取真俊『虹の鳥』論」が収録されている。この目取真氏の『虹の鳥』は、他の論者によってもあちこちで取り上げら…
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パレスチナの「自爆テロ」を題材にした小説ーーヤスミナ・カドラ『テロル』

ヤスミナ・カドラ『テロル』、藤本優子訳、早川書房、2007年  本書は、ヨルダン川西岸地区出身でテルアヴィヴに住むパレスチナ人男性医師が主人公。その妻は、イスラエル北部ガリラヤ地方の村、コフル・カンナ出身のパレスチナ人女性。妻の方はもともとイスラエル国籍者であり、夫は西岸地区からイスラエル側に移住し、国籍を取得した「帰化者…
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民族を超えた愛は和平を築けるのか?ーー『ハビービー 私のパレスチナ』

ネオミ・シーハブ・ナイ『ハビービー 私のパレスチナ』、小泉純一訳、北星社、2008年  本書は、アメリカ系パレスチナ人女性の著者の体験をもとにした小説だ。著者は実際に、アメリカに移住したパレスチナ人の父親とアメリカ人の母親を両親にもち、14歳頃だった1966~67年にかけて一家でパレスチナ・エルサレム郊外に移住した経験があ…
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ブラジル移民100年ーー日本の移民政策の隠された歴史と翻弄された人びとを描く長篇小説『移民の譜』

麻野涼、『移民の譜(うた)ーー東京・サンパウロ殺人交点』、徳間文庫、2008年  1908年6月18日に第1回のブラジル移民船が出てから、ちょうど100年になる。この本は、それを期にして、文庫化されたものだ(原題『天皇の船』文藝春秋、2000年)。  戦前の意味は、貧困な農村の人減らしが多かったが、戦後直後は戦地・植…
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世界の終わりに何をするのかーーアンナ・カヴァン『氷』

アンナ・カヴァン『氷』山田和子訳、バジリコ、2008年  気候変動で氷に覆いつくされつつあるという世界の終末。残された世界では、各国が戦争を繰り広げる。  1967年に書かれて、その著者アンナ・カヴァンは翌年に死去。ちょうど40年前ということになります。冷戦下の核危機などもあり、当時から終末論的なイメージはある程度広まっ…
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「餓死した英霊たち」からの想像力ーー奥泉光『浪漫的な行軍の記録』

奥泉光『浪漫的な行軍の記録』講談社、2002年  実は奥泉光氏の小説を始めて読みました。  奥泉氏には、朝日新聞の書評欄で、拙著『ユダヤとイスラエルのあいだ』を取り上げてくださりました(書評の全文はここ)。奥泉氏が拙著を読んでいるのに、評された私が奥泉氏の本を読んだことがないというのも申し訳なく、書評へのお礼も兼ねて、氏…
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二重三重のディアスポラ――在日コリアンの枠に収まらない多言語小説『キムチ』

ウーク・チャング『キムチ』(岩津航訳、青土社、2007年)  作者は日本生まれの朝鮮人、いわゆる「在日」として生まれるが、幼くして家族でカナダのケベック州に移住。のちに日本の大学に二年間ほど留学をしている。(元)在日コリアンであるとはいえ、日本語も韓国語も不自由であり、別の二重言語圏であるケベック州に育ったことから、第…
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植民地下での創氏改名――梶山季之『族譜・李朝残影』

梶山季之(著)、『族譜・李朝残影』(岩波現代文庫、2007年)  表題作「族譜」は、植民地下朝鮮で、日本が強いた創氏改名を舞台にした歴史小説。 「自発的行為」だとか「恩恵/権利」だと謳われた創氏改名を、実際のところ個々の家庭を訪問して強要する役割を担った小役人の目から見た矛盾を描く。創氏改名の「達成率」の低さを上…
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