ボヤーリン兄弟に続いて、シオニズムに抵抗するユダヤ教解釈、ラブキン『トーラーの名において』

ヤコヴ・ラブキン『トーラーの名において――シオニズムに対するユダヤ人の抵抗の歴史』、菅野賢治訳、平凡社、2010年

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 以前からここで紹介してきた、ボヤーリン兄弟による『ディアスポラの力』(赤尾・早尾訳、平凡社、2008年)も、ユダヤ教に内在するユダヤ人国家否定の思想を、ディアスポラ主義へと昇華させたものであったが、同じ平凡社から第二弾。ボヤーリンのときには帯に、「ユダヤ国家に抗うユダヤ人」というフレーズを付けたが、ラブキンの本の副題「シオニズムに対するユダヤ教の抵抗の歴史」。ボヤーリンの場合は、ユダヤ教の解釈およびディアスポラ主義の称揚に力点があったが、ラブキンのほうはより直接的にイスラエル国家への批判に力点が。
 これを機に、ボヤーリン『ディアスポラの力』もさらに読まれるようになってほしい。

 ただ一点留保を。ユダヤ教超正統派=反シオニズムではない。むしろ反シオニストは超正統派のなかでも異端中の異端のマイノリティだ。超正統派のシオニスト政党はイスラエルに複数あるし、連立与党に入ったこともある。イスラエルにおいて宗教と国家の関係はひじょうに錯綜している。反シオニストのユダヤ教思想でもって一点突破できるほど甘くはない。
 その点、ボヤーリン兄弟のほうが、ユダヤ教超正統派のタルムード解釈を、ディアスポラ主義の肯定としてイスラエル以外の世界に向けて提示するなど、視野の広さがあると感じる。

   *   *   *

 さて、この刊行を記念してシンポジウムが開かれる。

シンポジウム「ホロコーストとイスラエルを考える」
4月18日(日)午後1時半~5時半 (入場無料)
明治大学(駿河台キャンパス)リバティタワー 1階教室

第1部 午後1時半~午後3時半
 ●シンポジウム
 芝健介(東京女子大学教授 ナチズム、ユダヤ人問題史)
 山口里子(日本フェミニスト神学・宣教センター 共同ディレクター)
 岡真理(京都大学教授 現代アラブ文学、パレスチナ問題)
 徐京植(作家、東京経済大学教員 人権とマイノリティ)
 司会 鵜飼哲(一橋大学教授 フランス文学、現代思想)
第2部 午後4時~5時半
 ●講演 ヤコブ・ラブキン(モンレアル大学教授)
 「著者からのメッセージ」(英語/通訳あり)

●賛同者(略)

◆主催 『ホロコーストとイスラエルを考える』シンポジウム実行委員会
◆共催 明治大学軍縮平和研究所
◆協力 ケベック州政府在日事務所 平凡社
●実行委員代表 板垣雄三 臼杵陽 長沢栄治 長沢美沙子(コーディネーター)

◆問い合せ・連絡先  shalomsalaam2010@hotmail.co.jp
 03-3296-2292(明大軍縮平和研究所)

〈趣旨〉
 日本ではイスラエルというと「アンネの日記」が広範な読者層を獲得していることもあってすぐにホロコーストを思い浮かべる。ヨーロッパの反ユダヤ主義の帰結としてのホロコーストの犠牲の上に成り立った国だというイメージである。他方で、犠牲者であったはずの国家の軍隊が2008年12月末、ガザを攻撃し、1400人を超えるパレスチナ人が亡くなった。イスラエルは国際的非難にもかかわらず、その後も「自国の安全のため」だとして、その攻撃的姿勢をまったく崩そうとはしていない。イスラエルは「対テロ戦争」を遂行するためには手段を選ばないのである。最近もハマース幹部がドバイで暗殺され、偽造旅券を所持したモサド工作員が逮捕されたと報じられている。
 いまやイスラエル・イメージは分裂し、場合によっては衝突さえしている。ヨーロッパで生まれた反ユダヤ主義とシオニズムがホロコーストという悲劇を介してどのようにパレスチナという中東地域の問題になったのか。そして「ユダヤ人国家」イスラエルはこれからどこに向かうのか。今こそイスラエルという国を考えてみたい。そのため、このシンポジウムをさまざまな立場から自由かつ活発に議論できる開かれた場にしたい。

 ヤコブ・ラブキン・モンレアル大学教授が、その著書『トーラーの名においてシオニズムに対するユダヤ教の抵抗の歴史』(菅野賢治訳)が平凡社から出版される(3月末、定価5670円[税込み])のを機に、再び来日する。教授はこれまでユダヤ教ラビの立場からシオニズムを内在的に批判する発言を行ってきた。シンポジウムでは著者とともにイスラエルという国が存在する理由をさまざまな角度から議論してみたい。


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