沖縄の小説で今年もっとも重要な一作、目取真俊『眼の奥の森』(影書房)

目取真俊『眼の奥の森』(影書房、2009年)

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 前回、もののついでに話題作、池澤夏樹『カデナ』に触れたけれども、こんな駄作を、書評で絶賛したり、「今年の三冊」に取り上げたりする人が多いのに驚く。何が悪いとか間違っているのではないにせよ、設定、人物、主張がステレオタイプで、小説として何がきちんと評価してるのかと疑う。大作家に大出版社は売り方がうまいのか。

 それに対して、比較にならないほどの重大な作品が今年は出ている。目取真俊『眼の奥の森』。雑誌『季刊 前夜』で毎号の12回連載されたものの単行本化だ。沖縄戦で米軍に占領された島で起きた、ある事件をめぐる重層的な物語。
 視点や語りの複数性という手法では、『カデナ』と共通するようにも見えるが、文体から構図まで、まったく異質だ。比べて読めば、いっそう『眼の奥の森』のインパクトがわかる。いや比べなくとも、こちらだけ読めばそれでもう、、、読みながら、何度も胸苦しい感覚に襲われたし、ページを閉じたくなるほどのつらさを感じた。

 『カデナ』のほうにはそれがない。意図的に軽さを売りにしているのかもしれないが、ただの迎合ではないか。すでに何も責任も関係性も感じられていない、本土にある既定の風潮に対して、正当化の論理を与えるだけではないのか。
 それよりも目取真作品をこそ手にしてほしい。内容の詳細は書かない。ぜひ読んでほしい。

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