沖縄の米軍基地(普天間/嘉手納/辺野古、、、)に関連して、いくつかの本

大久保潤『幻想の島 沖縄』、日本経済新聞出版社、2009年
野里洋『癒しの島、沖縄の真実』、ソフトバンク新書、2007年
池澤夏樹『カデナ』、新潮社、2009年


画像


 いろいろ報道が出ている、沖縄の米軍基地移転問題。前自民党政権での合意であった普天間基地の辺野古への移設の是非、その他の選択肢など、だいぶ揺れている。でも大手メディアの報道は、アメリカの「顔色うかがい」をするようなものばかりだ。日米関係が悪化しかねないから、辺野古移転以外の選択肢は現実的ではない、と。

 しかしせっかく政権交代をし、現政権がウダウダしているこの機会に、もっと根本的なところから考えるべきではないか。沖縄の生活や政治・経済にとって米軍基地はどのような意味をもっているのか、米軍にとって本当に普天間基地は必要なのか。
 そこで、大久保潤『幻想の島 沖縄』は、政権交代前の今年7月に刊行された本ではあるが、ひじょうにタイムリーな刊行であった。
 2005-08年に日本経済新聞社の那覇支局長をしていた経験から書き下ろされた本だが、「経済」の観点から、具体的な数字を出しながら、沖縄の抱えている問題を、ひいては沖縄問題を抱えている日本社会の問題を、わかりやすく描いている。
 なかでも、「基地経済」や防衛予算・公共工事、補助金などによって、自立経済が不可能にさせられてしまっている構造的な問題の指摘は重要だし、数字が具体的であるだけに説得力がある。
 また、沖縄の駐留米軍のうちの、基地面積で75パーセント、兵士数で58パーセントを占める海兵隊について、そもそも沖縄に置くことの合理性がないことや、それゆえに海兵隊基地である普天間は「不要」であるという指摘、さらには米軍のアジア展開において、その中枢機能が横田・横須賀に集中させられているために、やはり普天間基地の機能はまったく重要性をもたないという指摘は、この機会に再確認しておくべきことだと思う。
 著者も言うように、「普天間移設問題」という注目の仕方は、かえって沖縄の問題や米軍の問題について、問題を矮小化したり隠蔽するのに好都合だということになる。普天間は、移設でなく、たんに「閉鎖」で済む話なのだから。

 ということで、本書は重要なことが記されているのだが、二点気になるところを。
 まず、著者は沖縄を離れていまは社会部デスクに移ったとはいえ、日経新聞に所属して、日経新聞社からこんな本を出すのであれば、いまの日経新聞の基地問題報道をもう少しなんとかすべきだ。自分の新聞社こそがダメ報道の典型を垂れ流しているのだから。
 第二に、沖縄の文化や気質にまで踏み込んでゴチャゴチャと言っているあたりは、あえて挑発的に書いているのだろうけれども、傲慢に聞こえるし、実際たかだか3年程度の滞在でそこまで断定的に言えるのかと、短絡があると思うし、反発を感じる。せっかくの重要な指摘も、不要な反感のために読まれなくなったら、著者にとっても損であるし、また総じて、本書の立場は、自らが加害者としての本土の人間であるという責任が欠如している。

    *    *    *

 その点、野里洋『癒しの島、沖縄の真実』のほうは、著者が本土の人間ながら、1972年の沖縄返還前の67年から、琉球新報に勤務、69年から那覇本社勤務、沖縄の女性と結婚という、半世紀近くにもわたって沖縄の側に身を置いての体験の蓄積、深い人間関係、愛情が、文章から伝わってくる。
 記者として記事を書いていたなかでは、この自身の半生をまったく反映させないで、記事に徹していたけれども、本書では自分を存分に出している。3年の滞在ですべてがわかったかのような前記の本とは異質な文体だし、返還前からの歴史の証言としても興味深い。

画像


 ところで、本土の人間の目で書かれたということで、今年出された池澤夏樹の小説『カデナ』にも一言。
 各紙の書評で絶賛されているけれども、そんなに大した作品だろうか。
 舞台は、1968年の嘉手納基地周辺。ベトナム戦争のために、B-52爆撃機が嘉手納飛行場から飛び立っていく。それから1970年のコザ暴動も舞台に使われている。
 登場人物たちは、二次大戦中のサイパンや、マニラや、原爆実験から、それぞれに暴力の歴史を背負っている。
 その連鎖も理解はできるし、68年あるいは70年から、それを読む現在に問題関心を引きつけていくことも容易だ。
 だけれども、あまりにも作為的なのが見え見えな舞台設定とステレオタイプな人物設定、それから「個人の戦い」というあからさまな政治的メッセージを人物に語らせているところなど、小説として駄作だと感じられた。書評誌では著者インタヴューもあり、沖縄人ではない著者は「訪問者としての視点」を意識したとか言っていたが、その自覚はいいとしても、しかしその何が作品に反映されていたのか。
 嘉手納への基地機能統合なんてことも岡田外相から言われたりで、タイムリーな出版ではあったけれども、イマイチな作品だった。というか、書評で絶賛されているのがよくわからない。

画像


にほんブログ村 本ブログ 学術・専門書へ


幻想の島・沖縄
日本経済新聞出版社
大久保 潤

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ商品ポータルで情報を見る




癒しの島、沖縄の真実 [ソフトバンク新書]
ソフトバンク クリエイティブ
野里 洋

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ商品ポータルで情報を見る