アルメニアの民族「独立」をめぐってーー吉村貴之『アルメニア近現代史』(ユーラシアブックレット)

吉村貴之『アルメニア近現代史ーー民族自決の果てに』(ユーラシアブックレット、東洋書林、2009年)

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 以前紹介したことのある、『コーカサスを知るための60章』(明石書店、2006年)の共編者のひとりであり、また、臼杵陽[監修]『ディアスポラから世界を読む』にも「故郷を創るーーアルメニア近代史に見るナショナリズムとディアスポラ」を執筆された、吉村貴之さんのアルメニア近現代史入門書。ブックレット60頁に濃縮された歴史解説で、600円とお買い得。

 カフカース(コーカサス)地方のアルメニア民族が、三つの大国、ペルシャとロシア帝国とオスマン・トルコとのはざまで翻弄され、とりわけ第一次大戦中から戦後にかけて、オスマン帝国によって虐殺と追放。そしてオスマン帝国の崩壊のあとは、独立をめぐって、新生トルコ、ロシア、英仏などとの駆け引きがあり、結局は革命後のソヴィエト連邦の成立を経て、ソ連に組み込まれた。
 1991年のソ連邦崩壊で独立。しかしなおも、隣国アゼルバイジャン(トルコ系民族の国家)のなかでアルメニア系住民の多いナゴルノ・カラバフ自治州の帰属をめぐって、なおも紛争が絶えない。

 こうした歴史のなかで、多くの党派・政治リーダーら(亡命者も多い)が、「民族自決」「独立」をめぐって内紛を展開したし、トルコやロシアや英仏、どこの勢力の力を借りるかでも路線対立があった。
 その複雑な歴史を、本書は丁寧に追っている。

 なお、ユーラシアブックレットについては、以前ここで大富亮『チェチェン紛争』を紹介したことがある。
 これで140冊を超えたが、『在日タタール人』や『中央アジアの朝鮮人』などなど、興味深いテーマの本が多い。

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