ロマ/ジプシーの「移動の痕跡」を音楽から辿る関口義人の二著、渾身のルポルタージュ

関口義人、『ジプシー・ミュージックの真実
  ――ロマ・フィールド・レポート』、青土社、2005年
関口義人、『オリエンタル・ジプシー
  ――音・踊り・ざわめき』、青土社、2008年


画像


 これまで、宋安鍾『在日音楽の100年』(青土社、2009年)や、平井玄『千のムジカ』(青土社、2009年)を紹介してきましたが、この二著は同じ編者・水木康文氏が担当したものです。
 その水木氏が編まれた、青土社刊の重要な音楽文化論が、今回紹介の関口義人著の二冊、『ジプシー・ミュージックの真実』(2005年)と『オリエンタル・ジプシー』(2008年)です。

 「ジプシー」という蔑称で知られるロマは、1000年ほど前の北インドに起源をもつ移動型民族(定住者も多いが)とされ、ヨーロッパ・中近東に広く住んでいます。とはいえ、ロマ/ジプシーの人びとがすべて北インドにルーツをもつわけでもなく、またこの歴史の蓄積によってひじょうに多様な文化発展を遂げており、けっして単一の民族というわけではありません。
 ところで、「ジプシー」というのは、「エジプト出身者/エジプト人」を意味する蔑称です。外部からの移住者に対して、オリエンタリズムさながらに、「不埒で、反社会的」な存在として、「オリエント=エジプト」に象徴させたわけです。このあたりは、二冊目の『オリエンタル・ジプシー』の「はじめに」で詳しく説明されています。

 ともあれ、この差別と迫害を受けてきた人びとが、「音楽」という文化創造の分野では、各地で本当に豊饒な発展を示してきました。著者は、インドから中東・トルコ、バルカン半島、ヨーロッパまで、まさに縦横無尽にロマ/ジプシーを追いかけてきました。この二冊のフォローする範囲を見ると、驚嘆させられます。下に、二冊分の目次を並べてみます。

画像


目次
『ジプシー・ミュージックの真実』
1 インド~トルコ
2 超絶技巧の異才を排出するブルガリア
3 二五〇万の"ジプシー"人口を抱えるルーマニア
4 "ジプシー・ブラス"の故郷、セルビアとモンテネグロ
5 最大集落シュト・オリザリとマケドニアのロマ
6 ヨーロッパから忘却された国、アルバニア
7 伝統と習俗――ハンガリーの"ジプシー"コミュニティ
8 複合的に形成される中央ヨーロッパのロマ社会

『オリエンタル・ジプシー』
1 イブン・バットゥータとの旅
2 シリアのドムを訪ねて
3 難民として生きるヨルダン、レバノンのドム
4 トルコのジプシーたち
5 ベリーダンスの系譜
6 未知のジプシーを求めて~イラン
7 ギリシャのジプシーの記憶
8 イタリアのロマ
9 その後のジプシー・ミュージック

 そしてどの章も、音楽を追いかけているだけではなく、各地のロマの歴史・文化・政治の貴重なルポにもなっています。写真も豊富に掲載。
 さらに、巻末には詳細な、「厳選ディスク・ガイド100」と「最新ディスク・ガイド100」もついていて、二冊セットで異様に充実したロマ/ジプシー文化論になっています。

にほんブログ村 本ブログ 学術・専門書へ





オリエンタル・ジプシー
青土社
関口 義人

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ