熊野純彦編『現代哲学の名著』中公新書、熊野純彦『西洋哲学史』岩波新書など

熊野純彦[編]、『現代哲学の名著――20世紀の20冊』、中公新書、2009年

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 中公新書の「名著」紹介シリーズに、熊野さん編集の「現代哲学」が入りました。
 熊野さんには論集『悪と暴力の倫理学』でお世話になったこともありますが、今回も同様に、若手研究者らとのコラボレーション。いつもながら、教育的配慮と、編集的配慮に行き届いています。

 5部構成で、各部4冊。第1部「数理・論理・言語」から第5部「神話・暴力・社会」にいたるまで、ゆるやかに「理念的なもの」から「現実的なもの」へ、「論理的な次元」から「経験の具体的な水準」へというふうな移行を意識しています。
 かつ、各部4冊のうちの1冊は必ず日本語で書かれた著書が入っている(大森荘蔵、西田幾多郎、坂部恵、和辻哲郎、廣松渉)。20世紀の哲学的展開を、日本語圏で考えるときに、日本の哲学者の世界性と同時性にも目配りが必要との立場から。

 各章は、それぞれの専門分野の若手研究者による執筆。エピグラフの使い方が面白い。20世紀の哲学書を紹介するにあたって、いずれも19世紀以前の思想家の著書から引用を持ってきています。ハイデガー『存在と時間』にはプラトン。『西田幾多郎哲学論集』にはマルクス=エンゲルス。ベルクソン『時間と自由』にはセネカ。ベンヤミン『ドイツ悲劇の根源』にはアリストテレス。といった具合に。「20世紀の哲学」と言っても、長い長い哲学史の一局面であるということを意識させてくれます。
 また、各章の末尾には4~5冊ほどの日本語(訳)文献が挙げられており、関心をもった人が具体的に個々の哲学者の思想に進んでいけるようになっています。

 熊野純彦さんと言えば、『西洋哲学史――古代から中世へ』&『西洋哲学史――近代から現代へ』(岩波新書)という通史二冊本を一人で書き切ったことで話題にもなりました。実際、偉業だと思います。
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 今度の『現代哲学の名著』でも、ほとんど一人で書けてしまうのではないかという気もしますが、そこで各専門の若手を起用するのも熊野さんらしい。
 その代わり『現代哲学の名著』では、熊野さんが一人で全20冊=20章の選択意図を概観する序章があるのですが、そこで見通しのいい整理をしています。本書はまずはそこを読んでから、関心のある各章へ、というふうな読み方ができると思います。

 そう言えば、哲学ブックガイドとしては最近、岩波ジュニア新書からも左近司祥子編『西洋哲学の10冊』というのも出ました。こちらはプラトン、アリストテレスから、ハイデガー、ラッセルまで、10冊を、ジュニア向けにやさしく紹介。少し「人生論」的な切り口が多い感じ。
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 熊野さんの『西洋哲学史』とこの左近司氏『西洋哲学の10冊』にも通じる、瑣末な疑問としては、プラトンらギリシャ哲学は「西洋」なのかな?、というところ。西洋思想の「起源」としてはそうなのでしょうけれども、そろそろ思想史の分野でも、ギリシャ思想の輸入の経緯についても地中海世界の視野で、ユダヤ思想とアラブ思想も入れて再構築したいところです。もういいかげん、伝統的な「西洋」哲学という括りは自明視できないですよね。

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