『オルタ:連帯経済』――特別記事に「村上春樹のエルサレム・スピーチ批判」

『オルタ』09年3-4月号、特集「連帯経済」

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 毎度紹介してます、『オルタ』(アジア太平洋資料センターPARC刊行)の最新3-4月号。特集は「連帯経済」。あまり耳にしない言葉です。
 編集部による巻頭言。
新自由主義のもとでのグローバルな市場経済は、人間や環境よりも利潤の追求を最優先とし、世界中の人びとから生きる権利を奪い続けてきた。しかしこうした暴力的な経済の波に巻き込まれながらも、人びとは協同・共生・信頼に基づく小さな経済活動を、生きるために、暮らしの中で確かに紡いできた。労働者・農民・消費者などの協同組合、市民がお金を循環させるNPO バンク、南北の公正な取引をめざすフェアトレード、貧困や社会的排除を解決するための共助システムの構築――例を挙げればきりがないほどの多様な取り組みである。「連帯経済」は、これら営みの総称であり、その一つひとつに光をあて、名前をつけ、互いに知り合っていく道のりをも含む。すでに私たちの日常の中に存在する、「連帯経済」の芽を探してみよう。これまでとは違う世界の姿が違って見えてくるはずだ。


 ちなみに、特集の副題には英語で、Solidarity Economy is already here! とあります。「連帯経済はすでにここにある」と。実際、すでに多くの取り組みがいろいろな地域、いろいろな局面で、模索されているわけです。なので、いきなりゼロからオルタナティヴを創り出さなくとも、何かを変えたい、何かをしたい、と思ったら、そこに「参加」できるような活動は手に届くところにあります。知るところから次の一歩へ、という期待も込めて、本号を紹介。

 目次より。
・底辺から、実生活の中から新しい経済を創るための戦略
   イーサン・ミラー
・協同組合が支える助けあいの経済
   小池洋一
・グローバルに広がる連帯経済のネットワーク&書籍紹介
   編集部
・お金の流れを変えれば、世界は変わる――市民金融の可能性
   田中優
・いのちをつなぐ労働と経済を
   古田睦美
・農村女性たちの小さくて豊かなビジネス
   内田聖子

 特集外から。
 まずは、松葉祥一「村上春樹のエルサレム・スピーチを批判する」。私自身、「 村上春樹のエルサレム受賞騒ぎが一段落したあとに、藤井貞和『湾岸戦争論』を読み返す」などという文章を書きました。松葉氏の文章は、もっとストレートに批判的なスタンスを明瞭にしています。内容的には賛同します。ただ、私は気分的には、村上春樹のスピーチがそもそも真っ正面から取り合うほどのものではない(というか、彼なりにはギリギリのところで言葉を綴っているとは思いますが、パレスチナ/イスラエルの現実に十分向き合えているとは思えないし、私にとっては村上春樹がどう発言するかは重大事ではない)と思っているので、上の記事ではだいぶ冷淡なことを書きました。が、松葉氏のスピーチ批判はそれとして賛同できる内容です。

 連載からは、丸川哲史「北京で考える(五)」。この春に帰国されたので、この連載は終わってしまうのかしら?? その他の雑誌でも北京レポートを一年間書かれていた丸川さん、一冊にまとめないかしら。彼ならではの貴重な視点で、日本に欠けている中国論と、中国から見た日本論を提示していました。

 大月啓介「隣のガイコクジン3 マカとモニカ」。沖縄からペルーに移民をした祖母マカと、その孫、つまり「日系人三世」として日本に労働移住をしたモニカ。かつては「準日本人」として歓迎され、いまは不況を理由に切り捨て可能な「外国人」扱いを受けている日系人について、二人の視点から再考します。

 東琢磨「「沖縄」見たことのない映像2 オキナワ/ヒロシマ・ノワール2――不安の形象」。いつもながら東さんの文章は、沖縄/広島だけでなく、「世界」の映像や音楽を参照しており、問いの広がりと深みを感じさせます。

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