フェミニズムから考える多様なアフリカの歴史――富永・永原編『新しいアフリカ史像を求めて』

富永智津子・永原陽子編、『新しいアフリカ史像を求めて――女性・ジェンダー・フェミニズム』、御茶の水書房、2006年

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 前回紹介したのはギルロイの『ブラック・アトランティック』であったが、今回はフェミニズムの観点から考えるアフリカ史。
 本書は、3年間にわたって行なわれた「アフリカ女性史に関する基礎的研究」の研究会の成果と、国際シンポジウム「女性/ジェンダーの視点からアフリカ史を再考する――奴隷制、植民地経験、民族主義運動とその後」の成果を最大限に反映させたものである。A5版で500ページ、全5部・15章の重厚な一冊だ。編者の富永氏によると、日本のアフリカ研究者は層が薄いうえに、女性史ともなるとさらに人数が限られており、アフリカや欧米の研究との格差が著しい。それを底上げすべく企画されたのが上記の研究会・国際シンポと本書ということになる。
 とはいえ、編者も記すように、アフリカの東部と南部に偏った研究であり、「ブラック・アトランティック」と最も深い関係にある西部が含まれない。これは今後別の形で補われるべき課題とのこと。それでもこの大著の画期的意義は強調されてしかるべきだ。ギルロイも言うように、「アフリカ」と一括りにできない多様さがあり、本書はきわめて具体的にその歴史を多面的に切り出し。アフリカ史像の刷新を試みているのだから。

 全15章の目次をあげるとたいへんなので、全5部の各タイトルだけ。
 第1部 フェミニズムと歴史
 第2部 奴隷史の再考に向けて
 第3部 抵抗運動史の再検討
 第4部 生活史の中のジェンダー闘争
 第5部 歴史と文学のはざま――女性たちの語りから

 編者の一人、富永智津子氏は、宮城学院女子大学の方ということもあり、個人的な面識がある。日本におけるアフリカ女性史の第一人者であるが、地方の仙台で長年、市民講座「アフリカセミナー」を続けておられるなど、市民の目線でアフリカ認識の向上や人種差別・民族差別の克服に取り組んでおられる。
 また、パレスチナ問題などへの関心も強く、宮学に板垣雄三氏や広河隆一氏を招き、講演会なども行なっている(市民にも公開したかたちで)。たぶん同じ仙台にあるもっと巨大な東北大学でも誰もやらないようなことだ。
 ご本人の専門は、ザンジバルを中心とした東アフリカ世界の近現代史で、インド洋地域もフィールドに入れられている。『ザンジバルの笛』(未来社)という読みやすい一冊があるほか、ケニアの女性解放闘争などの本の翻訳もされている。この分野での活躍には目をみはるものがある。

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