沖縄に押しつけられ隅々にまで浸透した日常的な暴力の所在を描く目取真俊『虹の鳥』

目取真俊『虹の鳥』(影書房、2006年)

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 先に紹介した、黒澤亜里子・編『沖国大がアメリカに占領された日――8・13米軍ヘリ墜落事件から見えてきた沖縄/日本の縮図』(青土社、2005年)のなかには、編者・黒澤氏による「目取真俊『虹の鳥』論」が収録されている。この目取真氏の『虹の鳥』は、他の論者によってもあちこちで取り上げられてきた「問題作」だ。

 生まれた家庭のなかにはすでに、親の世代から蝕んできたアメリカ軍基地による「暴力」が浸透してしまっている。圧倒的な軍事力や政治暴力のことだけではない。基地に依存させられてしまった歪んだ経済構造が、人生と人格を狂わせる。経済的暴力、精神的暴力。
 幼児期から肉体はつねに性暴力の危機にさらされ、学校のなかも暴力に満ちあふれている。
 読むだに不快な残虐な行為の描写は、しかし、日常生活のなかに浸透させられ遍在しているミクロな暴力をこそ喚起する。登場人物の少年・少女たちは、その生い立ちにおいて、多かれ少なかれ基地経済に荒廃させられてしまった家庭で、歪んだ生育を強いられている。そして日常的に米軍という圧倒的な暴力=軍事力の存在を見せつけられている。
 こうした背景を考えたとき、流血を厭わない暴力と性を媒介にした、ギャンググループの恐喝・上納金のシステムは、そこに関わる少年・少女たちを圧倒的な力で縛りつけ支配しているかのように見えながら、その一人一人はまったく無力な存在でしかない。
 そしてまた、別の意味で無力な、家庭のなかの親たち、学校のなかの教師たち。そしてまた、「無力だ」と少年らに蔑まれる何十万人もの市民のデモ行進。
 では「力」とは何か? そして暴力とは何か? そういう問いを突きつける小説だ。

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