日本のODAとパレスチナ/イスラエル「開発」について考える――『徹底検証 ニッポンのODA』

村井吉敬(編著)『徹底検証 ニッポンのODA』(コモンズ、2006年)

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 先日、自分も関わっているミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉でやっているセミナーで、日本のODA事業「平和と繁栄の回廊」構想についてのセミナーがあった。
 そこでは、パレスチナに行ったことがないという越田清和さんが、長くODAへの批判的提言をしてきた立場から、昨今の対中東ODAの政治利用・軍事化について、危惧を示された。
 とりわけ、1990年代湾岸戦争以降、日本のODAの出し方が、アメリカの中東政策と深く連携する形で、自衛隊海外派兵と相補関係に置かれるようになったという指摘には、ひじょうに納得させられた。この傾向は、もちろん、〈9・11〉以降、そしてイラク戦争以降、さらに強化されてきている。

 アメリカはアラブ圏に親米国家をひいては親イスラエル国家をつくるべく、エジプトとヨルダンを標的にして、経済援助や特恵関税そして自由貿易協定をテコに、働きかけてきた。とくにQIZ(資格産業区域制度)協定によって、イスラエルの原材料を使用することを条件とした対アメリカ輸出関税免除などは露骨なものだった。
 いまイスラエルはヨルダンとの国境地帯全体の大規模開発を国家プロジェクトに掲げているが、もちろんそこには、「平和と繁栄の回廊」構想が対象としているパレスチナのヨルダン川西岸地区のヨルダン渓谷地帯も含まれる。これは、イスラエルからすれば、エジプト~イスラエル~ヨルダンと地続きの地帯(そのままイラクや、サウジアラビアへと繋がっている地帯)に、親米の経済圏を構築するための一コマということになる。なんのことはない、そのアメリカ・イスラエル合作の親米経済圏構想に、「日本独自の」と謳った回廊構想は組み込まれ、日本はそのスポンサーとして利用されている、ということだ。
 ということで、先に触れた越田さんもこのQIZ協定のことに言及していた。

 つまり、「パレスチナ支援」のODAが、アメリカを軸とした「イスラエルのノーマライゼーション」政策に利用されている、と言えるのではないか。
 で、越田さんの話によれば、ODAがこういう使われ方をするように大きく舵が切られたのが、湾岸戦争以降ということになる。

 越田さんのODA批判の論考も含むのが、村井吉敬(編著)『徹底検証 ニッポンのODA』(コモンズ、2006年)だ。第4章「「反テロ戦争」下の援助――軍事化する援助」がその部分だ。
 本書は、他にも比較的新しいデータをもとに、日本のODAの問題点を多面的に抉っている。税金の使われ方の問題でもある。広く読まれてほしい一冊だ。

 なお本書は、ながくODA監視と提言をおこなってきたグループによる共同レポートであり、1992年には本書の前身となる村井吉敬(編著)『検証 ニッポンのODA』(学陽書房)を出している。同書は、主として、アジア地域でODA事業が、日本企業の利益誘導のために環境破壊・人権侵害をしていることを告発したものだった。残念なことに、その範囲がいまでは中東まで広げられているということでもある。

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