沖縄文学研究者の半世紀の政治発言集――岡本恵徳『「沖縄」に生きる思想』

岡本恵徳、『「沖縄」に生きる思想――岡本恵徳批評集』、未来社、2007年

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 前回紹介した沖縄発の雑誌『けーし風(かじ)』の創刊メンバーの一人、岡本恵徳氏の評論集。
 沖縄文学の研究者としては、『沖縄文学の地平』(三一書房)や『現代文学にみる沖縄の自画像』(高文研)などなど、計5冊の著書を岡本氏は刊行しているが、その倍の10冊分にも相当する時評やエッセイなども書いていた。しかも、たんに執筆・寄稿していただけでなく、沖縄から自分の声で発信する雑誌をつくり続けていた。そのひとつが『けーし風』だ。
 本書は、こうした雑誌や、その他地元の新聞などに、岡本氏が半世紀(1956-2006年)にわたって書いた文章から、縁のある人たちが精選し、編集したものである。

 刊行委員会の代表は、新川明氏、川満真一氏、新崎盛輝氏。同時代に沖縄の言論界をリードした同志たちだ。
 だが、本書の骨組みを提示し、本書に解説を寄せたのは、我部聖氏。岡本氏の文章を読み込んできた若い世代の研究者だ。その他、13人の人びとが編集実務にあたった。

 岡本恵徳氏は、新川氏らとともに「反復帰論」の立場から発言したことで知られるが、しかし、文学研究と住民運動に深くコミットした岡本氏は、単純な政治的主張をおこなっていたわけではない。
 戦争の記憶・戦争責任について、住民運動のつくり方について、「沖縄人」アイデンティティについて、言語・詩について、考察を重ね、そして「本土復帰」後も絶えずその意義を問いつづけてきた。
 本書は、その半世紀のエッセンスである。通読することで、半世紀の争点を再確認できるが、遺された、そして「本土」に突きつけられた課題は、重い。

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「沖縄」に生きる思想―岡本恵徳批評集
未来社
岡本 恵徳

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