地域が国家を超えるときーー移民社会・多文化社会はすでに現実である

川村千鶴子(編著)『 「移民国家日本」と多文化共生論ーー多文化都市・新宿の深層』明石書店、2008年

 
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 先の『ディアスポラと社会変容』『現代思想 隣の外国人』に続く、ディアスポラ論集第三弾、といったところでしょうか。多文化社会研究会を主宰する、友人の川村千鶴子さんによる編集の論文集です。
 編者の川村さんと執筆者の一人、河合優子さんには、『ディアスポラと社会変容』にもご参加・ご執筆いただいていました。また、執筆者の陳天璽さんは、『ディアスポラと社会変容』と『現代思想 隣の外国人』の両方にご登場です。このあたり、参加者が一部ずつ重なりながら、お互いの問題関心を共有し、また相互に刺激し合い、「ディアスポラ」や「多文化主義」などをキーワードにした研究を模索している、といったところ。

 この論集の特徴は、具体的な「地域」に焦点をあてていることでしょうか。とくに、定住外国籍者の割合が多い新宿を中心に、すでに多文化が「生きられた現実」になっている地域から論じています。
 日本政府は、少子化と労働力不足から、近い将来に「移民大国」となるのは確実であり、そうしたなかで「国民統合」を保持するには、「日本版多文化主義」を国是としなければならない、というような動きを見せています。現在各地方で、「多文化共生社会条例」などの策定の動きがあるのは、トップダウン式に国から地方自治体に通達がなされているからです。
 しかし、国家主導の「主義(イズム)」として多文化主義のかたちを模索などしなくとも、いくつかの地域ではとっくに「多文化」は生きている現実になっています。とくに、医療・介護、出産・育児、教育などなどの具体的な生活現場においてはそうです。
 それを、むしろ国家主導の移民大国、国家主導の多文化主義(もどき)にしていったときには、ほんとうの多文化的な活力は、失われてしまうのではないでしょうか。

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