パレスチナ/イスラエルを語る画期的ナラティヴ――『イラン・パペ、パレスチナを語る』

イラン・パペ『イラン・パペ、パレスチナを語る
 ――「民族浄化」から「橋渡しのナラティヴ」へ』
  (ミーダーン編訳、柘植書房新社、2008年)


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 イスラエルのニューヒストリアンの旗手、イラン・パペによる日本講演集。また、日本語で最初の翻訳。
 一方で実証史家として、1948年のイスラエル建国をシオニストによるパレスチナに対する「民族浄化」であったと論証しつつ、紛争を克服するための具体的な取り組みを、独特の歴史認識論や哲学によって「橋渡しのナラティヴ」として提言。南アフリカや北アイルランド、さらには東アジア地域なども射程に入れながら、まさに現代世界に生きる倫理を示す。

 パペ氏の招聘は「東京大学・共生のための国際哲学研究教育センター(UTCP)」、編訳は、「ミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉」
 私自身は、UTCPとミーダーンの両方のメンバーとして、招聘から全部の講演会に関わりました。全三回の講演会を通して聞いて、パペ氏のプレゼンテーション能力の高さには舌を巻きました。市民向け講演会、パレスチナ/イスラエルに関わる研究者・ジャーナリスト・NGO関係者向けの講演会、そして人文学系全般の研究者向けの講演会、この三回が開催され、すべての会で質疑応答の時間をたっぷりとりました。
 驚くべきは、パペ氏がすべての会で、原稿はおろかレジュメさえも用意せず、その場で聴衆層を見て内容や話し方を変えていったこと、そしてどんな質問に対しても真っ正面から明晰に応えていったこと。その言葉は、録音データを英語テクストに起こし、翻訳をしていったときに、一文一文が完結した文章で、トピックごとにも徹底的に論理的に展開されていました。
 三日間で三回の講演をおこない、それがそのまま全訳をして三章立ての本一冊ができてしまうということには、驚嘆せざるをえませんでした。

【参考リンク】
「イラン・パペ、日本講演集、刊行!――パペの仕事の全貌が読める」
「イラン・パペ講演集、刊行――パレスチナ/イスラエル現地から「共生」への倫理を問う」
「パペから学ぶ歴史認識と多文化共生」

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