植民地下での創氏改名――梶山季之『族譜・李朝残影』

梶山季之(著)、『族譜・李朝残影』(岩波現代文庫、2007年)

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 表題作「族譜」は、植民地下朝鮮で、日本が強いた創氏改名を舞台にした歴史小説。
「自発的行為」だとか「恩恵/権利」だと謳われた創氏改名を、実際のところ個々の家庭を訪問して強要する役割を担った小役人の目から見た矛盾を描く。創氏改名の「達成率」の低さを上司からネチネチと咎められ、結局のところは、強要する以外にはなかった。しかも、その「日本人らしい名前」の究極的な目的は、税金・供出、そして義務的徴兵の導入であったことを知った主人公が、創氏改名を拒む家庭を相手に現場で苦悩する。そして、衝撃的な結末。
 著者自身、植民地下朝鮮の生まれ育ち。植民地引き揚げの二世。

「族譜」というのは、代々受け継がれる家系図のことで、氏を変えるということは、その家系図「族譜」が途絶えることを意味する。族譜を後生大事にすることが、日本の植民地支配に対する抵抗ともなった、という背景がある。もちろん族譜そのものは、昔は女性は記載されなかったなど、ジェンダーの観点から見た差別の問題もあり、このテーマは、民族差別だけでなく女性差別や戸籍の問題など、重層的になっている。

 なお、この「族譜」を原作とした演劇の全国公演が始まっている。
 http://www.seinengekijo.co.jp/s/zokuhu/zokuhu.html(青年劇場「族譜」)

 また、水野直樹『創氏改名』(岩波新書、2008年)がちょうど刊行され、背景の勉強に役立つ。


族譜,李朝残影 (岩波現代文庫 文芸 123)
岩波書店
梶山 季之

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