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zoom RSS 隠れた名ジュネ論、梅木達郎『放浪文学論――ジャン・ジュネの余白に』

<<   作成日時 : 2009/05/29 12:39   >>

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梅木達郎、『放浪文学論――ジャン・ジュネの余白に』、
東北大学出版会、1997年


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 また梅木さんについて。
 彼は、デリダと、そしてジュネに没頭していた。ジュネのなかに、重要な主題を抉る視角をたくさん見いだしていた。国家、民族、家族、性、暴力、記憶、アイデンティティ。ジュネのテクストは、それらを取り上げてみては、次々と裏切り、反転させていく。梅木さんはジュネを、脱構築を実践するテクストとして読み込んだ。そしてそれを、「放浪」という名のもとに論じてみせた。

 梅木さんは、『ふらんす』(白水社)という雑誌に一年にわたって、ジュネについての文章を連載する機会を得た。本書は、その12回の連載をもとに、大幅に加筆・再編したものだ。
 当初は白水社から刊行するという話もあった、と聞いていたが、結局は、発足したての東北大学出版会の二冊目の書目に入った。残念ながら、東北大出版には装幀のセンスも営業力もない。そして、なんらテーマの統一もない「東北大学出版会叢書」に入れられているだけだ。
 そのため、本書はあまりにその存在が知られていない。残念だ。

 個人的な思い出になるが、これを連載していた当時、とある単行本化されたジュネ論を梅木さんは酷評していた。いかにそれがジュネの重要なモチーフを取り落としているかを僕に力説していた。
 だから本書は、梅木さんなりにジュネの真髄を意欲的に提示している。もっと広く読まれてほしい一冊だ。
【目次】
第一章 放浪のモチーフ
 1 歓待
 2 邂逅
 3 対話
第二章 方法としての放浪
 1 反転
 2 敵対
 3 暴力
 4 裏切り
第三章 根拠なき旅
 1 脱家族
 2 傷ついた祖国
 3 身体の脱構築
 4 越境する記憶
第四章 放浪のモラル
 1 放浪する民とともに
 2 アイデンティティなき戦い 

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